見積の返信は、たいてい質問から始まります。「これは税込ですか」「いつまでの価格ですか」。PDFには書いてあるのに、本文が「お見積書を添付いたしました。ご査収ください」の一行だからです。受け取った担当者はPDFを開き、稟議用に条件を書き写し、読み取れなかった点だけを送り返す。本文に3行あれば済んだ往復です。
- 合計金額(税込か税別か)、有効期限、数量と前提条件、納期の4つを本文に書き写します。相手がそのまま稟議へ転記できる4行にします
- 納期は「確約」「条件付き」「再調整」のどれで答えるかを先に決めます。決めずに書き始めると「なるべく早く」に落ちます
- 値引きを求められたら、金額だけを動かしません。範囲・数量・納期・支払条件のどれかと交換する形にします
本文に書き写す4項目
見積書そのものと本文は、役割が違います。見積書は取引条件の記録で、本文は相手が次の一手を決めるための要約です。下の4行を本文に出しておくと、担当者はそのまま社内へ回せます。
- 合計金額: 「合計{金額}円(税込)」。税別で出すなら消費税額も併記します。書かずに済ませると、稟議に要る税込金額を相手が計算し直すことになります
- 有効期限: 「本見積の有効期限は{日付}です」。抜けると、数か月後に同じ金額で発注が来たときに断りづらくなります
- 数量・前提条件: 「{数量}を前提とした単価です」「{支給物}のご支給を前提としています」。前提が変わっても金額は据え置きと読まれると、後の追加費用が値上げに見えます
- 納期: 「ご発注から{営業日数}営業日で納品いたします」。ここが空だと相手は発注時期を決められず、稟議が止まります
前提条件は、書きすぎると読まれません。金額が動く条件だけに絞ります。数量、支給物、作業場所、再作業の回数。この4つのうち、今回の見積で金額を左右したものだけを残します。
依頼が「ざっくりでいいので概算を」であれば、正式な見積書ができるまで待たせずに、幅を付けた金額をその場で返します。「概算として合計{金額}円、精度は±30%程度」のように精度も添えると、相手は予算の当たりを付けられます。正式版はいつ出すかを1行足しておけば、概算が確定金額として一人歩きしません。なお、発注側として見積を依頼するときの書き方は依頼メールの書き方と例文にまとめています。このページは出す側の文面だけを扱います。
納期回答の3型
納期の質問に困るのは、社内でまだ日付を保証できていないときです。そこで「確認のうえご連絡します」と返すと、相手は待つしかありません。保証できるかどうかで答え方を3つに分けると、確定していない段階でも返せます。
| 型 | 使う場面 | 書き方の核 |
|---|---|---|
| 確約 | 在庫と要員を押さえられている | 日付を1つだけ出す。「{日付}に納品いたします」 |
| 条件付き | 発注日や支給物の到着で日付が動く | 起点と所要日数で書く。「{日付}までにご発注いただければ{納品日}です」 |
| 再調整 | 希望日に間に合わない | 最短で出せる日と、間に合わせるなら削れる範囲を並べる |
条件付きで答えるときは、起点が動いたら納期も同じ日数だけ動くことを一文添えます。これがないと、発注が2週間遅れても当初の納品日を期待されます。再調整では、断って終わりにせず「{一部の成果物}のみ{先行日}に先行してお渡しできます」のような分割案を1つ用意します。先方にも展示会や決算のように動かせない日があるので、分割案は「どの成果物を先に渡すか」まで書きます。
値引きを求められたとき
金額だけを下げた回答は、その場は通っても、次回以降の基準価格になります。範囲・数量・納期・支払条件のどれかと引き換える形にすると、値下げの理由が相手にも説明できます。初期設定を範囲から外して{金額A}円にする、年間契約に切り替えて月額を{割合}%下げる、といった形です。こう並べれば、相手は予算内の選択肢から選ぶ側に回ります。応じられない場合は、いまの金額が精一杯である旨を先に書き、理由は「{原価要因}のため」と一文にとどめます。断り方そのものは断りメールのテンプレートを参照してください。
納期が遅れると分かったとき
第一報は、遅れると分かった時点で出します。原因の調査が終わるのを待つと、相手が別の経路で気づく順番になります。書く順は、遅れる事実、新しい納品日、原因、代替案、次の連絡日。原因は一文で足ります。自社に原因があるなら「{工程}の手戻りによるもので、進捗確認が遅れた当社の管理不足です」と認めます。責任の所在をぼかす「想定外の事象が発生し」のような書き方は信用を落とします。起点が相手側にある場合は、責める書き方を避けつつ事実として1行だけ示します。新しい日付をまだ確定できないときは、確定できない事実と、いつまでに確定させるかの日付を書きます。お詫びの文面の組み立てはお詫びメールのテンプレートにあります。