志望理由書は、志望先が「この人は入学後に何をするのか」を読み取るための書類です。提出した書類は、同じ学部に届いた書類が並ぶなかで読まれます。そこで見られるのは表現の巧みさではなく、学びたいことが具体的に決まっていて、その学校のどこがそれに応えるのかまで書けているかどうかでしょう。
- 「なぜこの学校か」は、パンフレットの言葉を写すのではなく、科目名、ゼミや研究室、実習の仕組みなど、シラバスや募集要項で確かめられる固有名で書きます
- 経験は「何をしたか」で止めず、そのとき何に困り、どう動き、何が変わったかまで書きます。役職の有無や実績の大きさは中心ではありません
- 入学後にやりたいことと卒業後の進路は、つながっている必要があります。片方だけだと、その学校を選んだ理由が最後まで説明できません
志望理由書と自己推薦書は、中心に置くものが違う
同じ出願書類でも、読み手が探している情報は別です。両方の提出を求められたとき、同じ経験を両方の中心に据えると、2枚読んでも情報が増えません。
| 志望理由書 | 自己推薦書 | |
|---|---|---|
| 中心に置くもの | 学びたいことと、その学校を選んだ理由 | 自分の強みと、それを裏づける経験 |
| 読み手が知りたいこと | 入学後に何に取り組むのか | 受け入れる判断材料がどこにあるのか |
| 経験の使い方 | 志望のきっかけと、動機の裏づけとして置く | 主役として、場面と自分の行動を書く |
| 書き出し | 学びたいことを1文で言い切る | 自分の強みを1文で言い切る |
| 締め | 入学後の学習計画と卒業後の進路 | その強みを入学後にどう使うか |
ただし、募集要項が独自の定義を置いていることもあります。「自己推薦書に志望理由も含めて記載すること」のような指示があれば、そちらが優先です。要項の説明を読んでから、どちらの中心に寄せるかを決めてください。
4つのまとまりに分けて、字数を配分する
書き始める前に、全体を4つに割ります。順番はこの通りでなくても構いませんが、4つとも入っている状態を目指します。
- 結論。学びたいことと志望先を1〜2文で言い切る(全体の1割程度)
- きっかけと経験。関心を持った出来事と、そこで自分がしたことを書く(3〜4割)
- その学校を選んだ理由。学びたいことと対応する固有の要素を挙げる(2〜3割)
- 入学後の計画と卒業後の進路。学ぶ順序まで具体化する(2〜3割)
800字の指定なら、結論に80字、きっかけと経験に300字、志望先の理由に200字、入学後の計画に220字といった配分が目安です。書き上げたら字数を数えて、2番目が痩せていないか、3番目が学校案内の引き写しになっていないかを見てください。
書き出しは3つの型から選ぶ
冒頭の1文は、読み手がどの分野の書類かを見当づける手がかりになります。生い立ちの説明から入ると、分野が分かるまでに数行かかります。次の3つのどれかで始めると、1行目で伝わります。
- 結論型:「私は{学科名}で{学びたいテーマ}を学びたいと考え、貴学を志望します。」学びたいことが1語で言えるときに使います
- 課題型:「{地域や現場}では{具体的な問題}が起きています。私はこれを{学問領域}の側から考えたいと思い、貴学を志望します。」社会的な課題から入るときに使います
- 経験型:「{時期}、{出来事が起きた場面}で、私は{直面したこと}に立ち会いました。」きっかけとなった場面が1つに絞れているときに使います
経験型は、2文目までに学びたいことへ着地させます。場面の描写が長引くと、読み手は志望理由を探しながら読むことになります。「私は幼い頃から」「貴学の建学の精神に共感し」のような書き出しは、書類の束のなかで見分けがつきません。
提出前チェック表
書き上げた原稿を、4つの観点で1項目ずつ見ていきます。全部を同時に直そうとすると全文の書き直しになるので、上から順に1つずつ処理してください。
| 観点 | 原稿のどこを見るか | 当てはまったときの直し方 |
|---|---|---|
| 使い回し感 | 学校名を別の学校に置き換えても、そのまま成り立つ文になっていないか | 置き換えると成り立たなくなる固有名(科目、ゼミ、実習先、施設、地域)を、志望理由の段落に1つ以上入れる |
| 志望先とのつながりの弱さ | 学びたいことと、その学校の何が対応しているかを1文で言えるか | 学びたいことを書いた直後に、シラバスや説明会で確かめた具体を置く。理念や校風だけで終えない |
| 根拠の薄さ | 「関心を持ちました」「学びたいと思いました」の前に、いつ・何をしたかが書いてあるか | きっかけを1つに絞り、時期と自分の行動込みで書く。出来事を並べるほど、どれが動機か読めなくなる |
| 抽象的な自己PR | 「コミュニケーション力」「主体性」などの語が、場面の説明なしで置かれていないか | その力を使った場面を1つ選び、自分が判断したことと、その後どうなったかを書く |
4つのうち最初に効くのは根拠です。きっかけが具体になると、志望先の理由と自己PRも自然に細かくなり、使い回し感は最後に残った1〜2文を直すだけで消えることが多いです。
提出前に見直したいNG例
- 募集要項の指定を外す。字数、様式、文体(です・ます/である)、提出方法は要項が最優先です。文体の指定がない場合の選び方は常体と敬体の違いと使い分けにまとめました
- 学校のパンフレットやWebサイトの文をそのまま書き写す。同じ文が並んだ書類は、読み手には調べた形跡ではなく、写した形跡として見えます
- 見つけた例文をそのまま提出する。出願書類の作成について要項や学校の案内に条件が示されていることがあるので、写す前にそちらを確かめてください。加えて、写した文章は、面接で「なぜそう考えたのか」と掘り下げられたときに、自分の言葉で支えられません
- 「必ず役に立てます」「絶対に貢献します」のように、確かめようのない断定で締める。約束ではなく、入学後にやることを書きます
- 敬体と常体が混ざる。一度どちらかに決めて、最後まで揃えます
- 施設の新しさや立地の良さだけを志望理由にする。それらは学びたいことと結びついて初めて理由になります
- 短所や失敗の告白で終える。書くなら、その後に自分が変えたことまで書きます
- 締めが「よろしくお願いいたします」だけで終わる。最後の段落は入学後の計画に使います
就職活動の志望動機とは、読み手も軸も違う
同じ「志望」でも、就職活動で提出する志望動機やエントリーシートは、読み手が採用担当者に変わり、見られる軸も入学後ではなく入社後の働き方に移ります。進学の志望理由書をそのまま短くしても、就活の書類にはなりません。就活の志望動機・ESは、志望動機・ES添削チェックツールに文章を貼り付けると、弱い箇所を確かめられます。インターンやOB訪問のお礼メールはインターンのお礼メールのテンプレートにまとめています。
誰かに読んでもらうときは、見てほしい観点を渡す
「どうですか」とだけ言って渡すと、返ってくるのは誤字の指摘と全体の感想になりがちです。上のチェック表の観点を1つ指定して、「志望先とのつながりが弱くないか見てください」と頼むと、直せる形で返ってきます。学校の先生に依頼するときの「ご教示」と「ご教授」の使い分けは、「ご教示」と「ご教授」の違いで整理しています。
ここまでの作業のうち、集めたメモを並べ替える、書き上げた文章を読み返す観点を出すといった前後の工程は、道具に任せられます。一方、自分の経験と志望先を1本の線でつなぐ数文は、調べた本人でなければ書けません。読み手が追っているのも、あなたが何を見て、何を調べ、どこで志望先と結びついたのかという順序です。