書き始める前に、決めておくことが1つあります。いまの職場を離れる理由のうち、応募先で解決するものはどれか、という点です。ここが決まっていないと、前半は現状の説明、後半は応募先への期待という、あいだに線のない文章になります。
- 転職理由は、いまの状況の説明で止めずに、次の職場でやりたいことまで書き切ります。理由が現状の説明で終わると、応募先の出てこない段落が残ります
- 応募先を選んだ理由は、求人票と事業内容のなかから拾います。転職の募集では職務内容が細かく書かれていることが多く、材料はそこにそろっています
- 経験は、年数や役職ではなく、応募先の仕事と重なる部分を選びます。同じ職種でも、扱う商材や顧客の規模が違えば、重なる部分は変わります
転職理由と志望動機は、3つの接続でつなぐ
転職の志望動機は、次の3か所がつながっているかどうかで読みやすさが変わります。文を並べる順番ではなく、つなぎ目の話です。
- 前職の経験と、転職理由のつなぎ目。いまの仕事で何を担当し、そのなかで何に手が届かなかったか
- 転職理由と、応募先のつなぎ目。手が届かなかったことが、応募先では担当範囲に入っている
- 応募先と、入社後のつなぎ目。入社してすぐ担当できる業務と、その先で広げたい範囲
この3つがつながっていれば、並べる順番は入れ替えても成立します。履歴書の欄のように短い場合は、1つ目のつなぎ目を1文に圧縮して、2つ目と3つ目に字数を回すと収まります。
つなぎ目が切れている書類では、前半と後半で主語が入れ替わります。前半は自分の経歴、後半は応募先の事業紹介の要約で、あいだに自分の判断が入っていません。書き上げたら、2つ目のつなぎ目にあたる1文を探してみてください。見つからなければ、そこが抜けています。
転職理由を、次の環境でやることへ言い換える
転職を考えた理由が、そのまま書類に載せられる形になっていることは多くありません。書き換えるのは事実ではなく、どこを切り取るかです。給与への不満は、裏返すと成果の測り方への関心だったり、担当範囲を広げたいという話だったりします。
| そのまま書くと | 志望動機に接続する書き方 | 接続の根拠になる事実の例 |
|---|---|---|
| 給与を上げたい | 成果が数字で測られる仕事に移り、その基準のなかで受け持ちを広げたい | 前職で自分の担当分の売上や処理件数を記録していた |
| 人間関係が合わない | 役割分担と決め方が手順として決まっている職場で、部署をまたぐ調整を担当したい | 他部署との調整を任され、決め方の手順を残した経験 |
| 残業が多い | 手順を整えながら、決められた時間のなかで結果を出す進め方に関わりたい | 前職で確認の工程を見直し、処理にかかる時間を短くした経験 |
| 評価の基準が分からない | 目標と評価の基準が示された環境で、自分の結果を確かめながら働きたい | 自分で目標を立てて振り返っていた記録 |
| 業務内容が合わない | 兼務で分けていた時間を、応募職種の業務にまとめて使いたい | 兼務のなかでその業務に使っていた時間や件数 |
| 会社の将来性が不安 | 事業が伸びている領域で、いままでの経験を使える仕事に移りたい | 前職で扱っていた商材と、そこで自分が受け持っていた範囲 |
| 転勤や勤務地の事情 | 同じ地域で働き続けながら、いまの職種の経験を積み上げたい | 同じ地域を担当し続けたあいだに増えた取引先や引き継いだ業務 |
左の列を書類から消すのではなく、右の2列に置き換えます。事実を変えずに、応募先に関係する面だけを取り出す作業です。書類でだけ前向きにすると、あとで転職理由を尋ねられたときに話が合わなくなるので、実際の理由から離れない範囲に留めてください。勤務地や勤務時間の希望そのものは、本人希望記入欄や応募フォームの該当項目に書く場所が別にあります。
応募先を選んだ理由は、求人票のなかから拾う
なぜ同業他社ではなくこの会社なのか、という問いは、書類のなかで最も書きにくい部分です。転職の場合、材料の集め方は選考の入り口から変わります。求人票に、職務内容、担当範囲、チームの構成、使っている道具まで書かれていることが多いためです。
次の3つを求人票から書き出すと、応募先ごとに差し替える段落の材料になります。
- 担当する業務のうち、自分がすでにやったことがあるもの
- 担当する業務のうち、まだやったことはないが、近い経験があるもの
- 求人票に書かれた体制や進め方で、いまの職場と違うところ
他社と入れ替えのきかない一文になるのは、3つ目です。同じ職種の求人でも、対象の顧客、チームの人数、担当する工程は募集ごとに違います。事業内容の紹介を写した文は、募集要項を読めば誰でも書けるので、志望の理由としては弱くなります。
求人票を読んで気になったことが出てきた場合は、書類の側で推測を書かず、選考の場で確かめる項目として手元に残しておくほうが安全です。
履歴書と職務経歴書では、志望動機欄の役割が変わる
志望動機を書く欄は、1か所とは限りません。同じ文を2か所へ貼ると、書類のなかに同じ内容が2回出てきて、片方の欄で伝えられることがなくなります。
- 履歴書の志望動機欄。200字前後が目安です。市販の様式では「志望の動機」「志望動機・特技・自己PR」のように、ほかの項目と同じ欄になっていることもあります。ここは応募先を選んだ理由を1つに絞り、経験の説明は短く添えます
- 職務経歴書の志望動機欄。欄を設ける場合は300字前後まで使えます。経歴の本体に書いた実績と、応募先の業務との対応を書く場所です。履歴書に入れた1文を、根拠のところで展開する形にすると重なりません
- 応募フォームの自由記述欄。字数の指定に従います。指定がない場合は履歴書の欄と同じくらいの分量にしておくと、後から提出する書類と食い違いません
職務経歴書に志望動機の欄を作るかどうかは、様式によります。決まった様式のない書類なので、求人票に指定がなければ、志望動機は履歴書と添え状の側に置き、職務経歴書は経歴と実績に使う作り方もあります。2か所に書く場合は、短いほうを先に書いてから展開すると、重複に気づきやすいです。書類全体の構成は職務経歴書の書き方と経歴タイプ別の構成テンプレートにまとめています。
未経験の職種へ移るときは、近づいた場面を1つ選ぶ
経験のない職種へ応募する場合、志望動機の欄で書けるのは、なぜその職種なのかです。関心を持った時期から書き始めると、応募先の話にたどり着く前に字数を使い切ります。いまの仕事のなかで、その職種の業務に近づいた場面を1つ選んでください。
事務職から人事へ移る場合なら、面接の日程を組んでいた期間や、入社手続きの書類を扱っていた期間が、その場面にあたります。まったく同じ仕事でなくても、扱う相手や進め方が近ければ、応募先の業務との対応を書けます。場面を2つ3つと並べると、どれが出発点なのか読み取れなくなるので、1つに絞ります。
求人票に未経験歓迎と書かれている場合も、書類でその語をなぞる必要はありません。近づいた場面を1つ書いておけば、その職種の業務のどこから始められるかを、こちらから示せます。
提出前によくある4つの崩れ方
書き上げた原稿は、次の4つに当てはまるところだけ直します。全文を書き替えずに済むように、崩れ方ごとに見えかたと直し方を分けてあります。
- 待遇や勤務条件が理由の中心になっている
- 見えかた: 条件の説明が段落の主語になり、応募先で担当する業務の名前が出てきません
- 直し方: 言い換え表の右2列に置き換え、担当したい業務へ主語を戻します。条件そのものの希望は、表の下に書いたとおり別の欄へ回します
- 同業他社に出してもそのまま通る文になっている
- 見えかた: 応募先を別の会社に入れ替えても、文章がそのまま読めます
- 直し方: 求人票から書き出した3つ目、体制や進め方の違いにあたる一文を入れます
- 前職の経験と応募先の業務がつながっていない
- 見えかた: 前半の経歴と後半の志望理由が、それぞれ別に完結しています
- 直し方: 3つの接続のうち2つ目にあたる文を探し、見つからなければ1文足します
- 書いた欄の分量に合っていない
- 見えかた: 履歴書の欄からあふれるか、職務経歴書の欄が数行で終わっています
- 直し方: 履歴書の欄は前職の説明を削って200字前後にします。職務経歴書の欄は、実績と応募先の業務の対応を1つ足して300字前後まで伸ばします
4つは別々の問題に見えますが、直すと連鎖します。応募先ごとの一文を入れた時点で、その前後の文と、条件の話に使っていた字数の行き先が同時に変わります。
新卒の志望動機とは、根拠に使うものが違う
新卒の選考で書いた型は、転職ではその形のままだと使いにくくなります。新卒では、これから何ができそうかを学生時代の経験から書きます。転職では、すでに担当した業務が応募先の仕事とどう重なるかを書きます。学生時代の経験を志望の根拠に置くと、直近の職務経歴との間が空いて、いま何ができる人なのかが読み取りにくくなります。新卒側の書き方は就活の志望動機の書き方と業界系統別の例文にまとめています。
応募先が変わるたびに全文を書き直す必要はありません。書き換えるのは、求人票から拾った段落と、入社後の担当に触れた一文です。前職の経験を書いた部分は、応募する職種が変わらない限り、書き直さずに済みます。