自己PRの欄では、強みの名前だけを置いた文と、その強みが出た場面まで書いた文とで、読み終えたときに残る情報の量が変わります。「継続力があります」だけなら誰でも書けますが、「新入生向けの説明会で、前年に質問が多かった項目を先に話す順番に変えた」まで書かれていると、同じ文を書ける人は限られます。選ぶ場面は1つ、その場面で自分が決めたことを1つ、応募先の仕事とつながる一文を1つ。この3点が入っていれば、字数が変わっても骨組みは崩れません。
- 強みは1つに絞ります。2つ以上並べると、それぞれの場面が短くなり、どちらも根拠が足りない状態で終わります
- 場面は成果の大きさで選ばないほうが書きやすいです。うまくいかない時期があり、そこで自分が何かを変えた場面のほうが、書くことが多く残ります
- 最後の一文は、応募先の仕事のどの場面でその強みを使うかに充てます。「貢献したい」で終えると、強みと仕事の接点を読み手の推測に委ねることになります
自己PRは、強み・場面・接続の3つで組む
自己PRの本文は、次の3つで足ります。
- 強み。何ができるかを1文で言い切る。「{何を}{どうする}力」の形にすると、次の場面の話と自然につながる
- 場面。いつ、どこで、何が起きて、自分が何をしたか。本文の半分以上をここに使う
- 接続。その強みを応募先のどの仕事で使うか。募集職種の名前まで出すと、読み手が配属後を想像できる
書き出しは、1の強みを先に言い切る形が基本です。ただし、困っている状況の説明が先にあったほうが分かりやすい経験なら、1文目を場面から始めて、2文目で自分の強みに着地させてもかまいません。場面の描写に入る時点で「何の話か」が伝わっていれば、この形でも3つの要素はそろいます。
2の場面には、締めの一文として、その経験から自分が何に気づいたかを置きます。下のテンプレートで3段落目に入れてある一文がこれにあたり、3の接続とは別に数えてください。ここを飛ばすと、行動の説明で終わって、次の応募先の話へつながりにくくなります。
「結論、具体、結論」の形にすると、限られた字数のうち2回を結論に使うことになります。同じ強みを最後にもう一度書くより、締めの1文を応募先の仕事に向けたほうが、読み終わったときに残る情報が増えます。設問が「あなたの強みを教えてください」だけなら1と2で足ります。「その強みを当社でどう活かしますか」まで含む設問なら3まで書きます。設問文に問いが2つ入っていることもあるので、書き始める前に句点で区切って数えてください。
400字と200字では、削る場所が違う
エントリーシートの自己PR欄は、400字前後の指定をよく見かけますが、200字の欄や、100字台の短い入力欄が混ざることもあります。上限は入力欄や設問文に書かれているので、書き始める前に目を通しておいてください。同じ原稿を字数だけ合わせて縮めると、どの文も説明不足になります。配分の目安は次のとおりです。
| 指定字数 | 強み | 場面 | 接続 | 先に削るもの |
|---|---|---|---|---|
| 400字 | 40字 | 280字 | 80字 | 削らずに、場面の描写を厚くする |
| 200字 | 30字 | 130字 | 40字 | 所属、規模、始めた経緯などの前置き |
| 120字前後 | 25字 | 75字 | 20字 | 経緯に加えて、結果の説明。行動を1つだけ残す |
削る順番は、前置きから後ろへ向かいます。所属や規模の説明は、行動の話が始まればおおよそ伝わります。最後まで残すのは、自分がした行動と、その後で変わったことの2つです。数字は少ない字数で多くを伝えられるので、期間、回数、人数は短い欄でも残します。逆に「粘り強く」「積極的に」のような副詞は、削っても伝わる情報が減りません。
このページの下に置いたテンプレートは、波括弧のプレースホルダを含んだ骨組みです。プレースホルダを自分の経験に置き換えると、この配分表のとおりの字数に近づきます。
長所と短所は、名前ではなく場面で書く
長所を聞く欄と自己PRの欄が別々に用意されている書類もあります。どちらも、語だけを置くと読み手には判断材料が残りません。よく使われる語を、場面の言い方に置き換えたものが次の表です。
| よく使う長所の語 | そのままだと伝わらないこと | 場面に置き換えた言い方 |
|---|---|---|
| コミュニケーション力 | 話すのが得意なのか、聞いて整理できるのか | 意見が割れた場面で、双方の言い分を書き出してから論点を1つに絞りました |
| 責任感 | 自分が引き受けた範囲がどこまでか | 担当外だった在庫の確認を自分の当番表に入れ、引き継ぎ用の一覧を作りました |
| 継続力 | 続けた期間と頻度、その間に変えたこと | 週3回の練習を2年続け、途中から記録の付け方を回数から内容に変えました |
| 協調性 | 周りに合わせただけなのか、動かしたのか | 参加率の低い人に個別で声をかけ、参加できる曜日を集計し直しました |
| 主体性 | 誰の指示でもなく始めたことがどれか | 引き継ぎ資料がなかったので、当番の手順を写真つきの1枚にまとめました |
| 課題解決力 | 何を課題として選んだのか | 返品理由の記録から、サイズ表記の分かりにくさに絞って書き直しを提案しました |
短所の欄は、長所への言い換えだけで終えると、その先を聞かれたときに話す材料が残りません。裏返した言い方に、いま自分がしている対処を1文添えます。
| 短所 | 裏返した長所 | 添える対処の一文 |
|---|---|---|
| 心配性 | 準備を早めに始められる | 確かめる項目を先に3つ決めて、時間をかける箇所を絞るようにしています |
| 優柔不断 | 決める前に選択肢を集められる | 判断の期限を先に決めて、その時点で情報が足りなくても選ぶようにしています |
| 頑固 | 決めたやり方を最後まで通せる | 反対意見が出たときは、理由を聞いてから自分の案と並べ直すようにしています |
| せっかち | 着手が早い | 急いで出した後に見落としが出やすいので、提出前に読み返す時間を先に取っています |
| 人見知り | 相手を見てから話せる | 初対面の場では、質問から入って相手の話を先に聞くようにしています |
| 抱え込みやすい | 任された仕事を最後まで持てる | 進み具合を週に一度共有して、遅れそうな段階で相談するようにしています |
長所の欄と自己PRの欄の両方に、同じ強みを書いてもかまいません。片方は場面を1つに絞って書き、もう片方は日常の行動の癖として書くと、2つの欄で情報が重なりません。
自己PRが思いつかないときは、頼まれごとから逆算する
強みが出てこないときに、強みの一覧から自分に近いものを選ぼうとすると、名前は決まっても場面が出てきません。順番を逆にします。
- 直近2年で、人から頼まれたこと、任されたことを5つ書き出す。自分で強みだと思っていることではなく、他人が任せてきたことを拾う
- それぞれについて、自分が実際にした動作を動詞で3つずつ書く。「調べた」「声をかけた」「記録した」「並べ替えた」「断った」のように、体を動かした言葉に限る
- 15個の動詞を並べて、重なっているものを探す。3回以上出てくる動詞があれば、それが強みの中身になる
- その動詞に名前をつける。「粘り強さ」のような一語ではなく、「{何を}{どうする}力」の形にする。「手順を記録して次の人に渡す力」のように長くてよい
アルバイトも部活もしていない場合でも、授業の課題、家族の手伝い、続けている趣味から同じ手順を踏めます。動詞が3つ書けない出来事は、まだ言葉になっていないだけなので、いったん外して次へ進んでください。5つとも動詞が重ならないときは、1つの出来事に戻って、その日の動きを時系列で書き出してみてください。書き出す粒度が細かくなると、重なりも見つかります。
提出する前の点検表
原稿ができたら、次の6つを1行ずつ確かめます。当てはまった行はその場で直し、直し終えてから次の行へ進んでください。
| 見るところ | 直し方 |
|---|---|
| 強みが2つ以上並んでいないか | 場面を長く書けるほうを残す。もう1つは長所の欄や面接で話す材料に回す |
| 強みの名前のあとに、その強みが出た場面が続いているか | 名前をいったん消し、いつ、どこで、自分が何をしたかから書き直す。名前は場面を書いた後に付け直すと短くなる |
| 場面に、自分が決めたことが1つ入っているか | 「頑張った」「取り組んだ」を、選んだ、断った、順番を変えた、聞きに行った、のような動詞に置き換える |
| その強みを応募先のどの仕事で使うかが、1文で書かれているか | 募集職種の一覧を開き、その職種が実際に扱う仕事の言葉に置き換える |
| 締めの1文が、業種の違う会社の欄に貼ってもそのまま通る内容になっていないか | 採用サイトや説明会で自分が確かめた事実を1つ入れ、その職種が担当する仕事に結び直す |
| 設問文に、最後まで答えているか | 設問を句点で区切って問いの数を数え、それぞれに対応する文があるか見る。「強みと、それを発揮した経験」なら2つ |
先に見るのは1つ目と6つ目です。1つ目は、どの強みで書くかが決まらないまま直しても、後で場面ごと入れ替えることになるからです。6つ目は、設問が求めている項目に答えていなければ、他をどれだけ整えても届かないからです。残りの4つは、下のチェックツールの見ている点と重なります。ツール側で扱うのは、抽象的な自己PR、根拠の薄さ、企業とのつながりの弱さ、使い回し感の4点です。自分で読み返す前に貼り付けておくと、書いた本人には見えにくい2つ目と5つ目に先に気づけます。
生成AIに任せられるところと、任せられないところ
募集要項や提出時の案内で、生成AIの利用について触れている応募先があります。書かれている場合は、その指示が優先です。ここから先は、指示が見当たらないときの使い分けの話になります。
自己PRをAIに書かせると、文としては整ったものが出てきます。ただ、出てくるのは強みの名前と、その名前によく添えられる一般的な行動です。あなたがその日に何を選び、何をやめたかは、渡していない限りモデルの側にありません。結果として、上の点検表の2つ目と5つ目に同時に当たる原稿になります。
材料がそろった後の工程なら、任せると速く進みます。
- 棚卸しで書き出した動詞を、似たもの同士でまとめさせる
- 書いた自己PRを渡して、場面の説明がないまま置かれている抽象語を拾わせる
- 400字の原稿を200字にするときに、削る候補を挙げさせる
自分で書くしかないのは場面の細部です。誰が困っていたか、なぜその方法を選んだか、やってみて何が変わったか。ここはメモの形でかまわないので、先に自分で書き出してから渡すと、返ってくる文章も変わります。面接では、提出した自己PRの内容について質問されることがあります。書いた文の根拠を自分の言葉で説明できる状態にしておいてください。
志望動機やガクチカとは、切り取る面を変える
同じ経験を、自己PR、ガクチカ、志望動機の3つの欄で使ってもかまいません。3枚を並べて読んだときに、同じ文が2回出てこなければ大丈夫です。取り出す部分を設問ごとに変えます。
| 設問 | 中心に置くもの | 同じ経験から取り出す部分 |
|---|---|---|
| 自己PR | 強みと、それが出た場面 | 自分が決めた1場面と、その後で変わったこと |
| ガクチカ | 取り組みの過程 | 期間の長さ、途中で変えた方法、周りの動き |
| 志望動機 | 応募先を選んだ理由 | その経験から生まれた関心と、応募先で確かめた事実 |
志望動機の欄については、就活の志望動機の書き方と業界系統別の例文で構成と業界別のテンプレートを扱っています。ガクチカの欄は取り組みの過程を書く設問なので、経験タイプ別のテンプレートと深掘り質問への備えをガクチカの書き方と経験タイプ別の例文にまとめました。インターンや説明会で自分が任された作業は、自己PRの場面としてそのまま使えます。お礼を送るときの文面はインターンのお礼メールのテンプレートに用意しています。
書き上げたら、一度声に出して読んでみてください。自己PRは面接でも口頭で聞かれます。読んでいて息が続かない文は、たいてい1文に2つのことが入っています。そこを2文に割るだけで、書類としても話す材料としても扱いやすくなります。