ガクチカは「学生時代に力を入れたこと」を縮めた就活の言葉で、志望動機や自己PRと並んでエントリーシートと面接で聞かれる設問です。この欄で読み手が探しているのは、活動の名前や成果の大きさよりも、思うように進まない時期に自分が何を選んだかの記述だと考えられます。書く前に決めるのは経験を1つ選ぶところまでで、選び終われば、あとは思い出す作業になります。
- 選ぶ基準は、書ける分量ではなく、質問を重ねられても答えが続くかどうかです。長く書ける経験と、掘り下げに耐える経験は別のことがあります
- 団体での活動を書くときも、主語は自分に固定します。「私たちは」で始まる文が続くと、誰の話なのかが読み取れなくなります
- 数字は、自分が覚えている単位で書きます。手元に記録のない数字を大きめに置くと、規模を聞かれた段階で説明が続かなくなります
5つのブロックに割り振ってから書き始める
400字前後の欄なら、次の5つに割り振ると分量の見当がつきます。設問が短い欄でも、この5つのうちどれを残すかを決める形になるので、最初に400字の版を作っておくと後が早く済みます。
| ブロック | 書く内容 | 400字での目安 |
|---|---|---|
| 結論 | 何に力を入れたかを1文で言う。活動と期間まで入れる | 50字 |
| 状況 | その活動で何が起きていたか。自分の役割もここに置く | 70字 |
| 行動 | 自分が決めたこと、試したこと、直したこと | 160字 |
| 結果 | 行動の後で変わったこと。数えられるものは数で書く | 60字 |
| 学び | その経験の後に自分の中に残ったもの | 60字 |
「入社後にどう活かすか」まで問う設問に限り、学びの後ろに応募先での使い道を1文だけ加えます。
順番は上から下へ書くのが読みやすいのですが、結論の1文が長くなりそうな経験では、先に状況を1文置いてから、何に取り組んだかを述べても通じます。下のゼミ・学業のテンプレートはこの形にしてあります。どちらの形でも、2文目までには取り組みの中身が分かるようにしてください。
思い出す順序は、書く順序とは逆にします。結果から遡って、その結果の直前に自分が何をしたか、その行動を始めたきっかけは何だったか、と辿ると、状況の説明が必要な範囲まで自然に絞れます。先頭から書き始めると、活動の紹介に字数を使い切って、行動の欄が数行しか残らないことがあります。
200字前後の欄では、結論の1文を残したまま、状況を短くまとめて行動の文につなぎます。100字台の欄では学びも外し、自分がしたことを1つと、その後どうなったかの2つに絞ります。削る対象は、活動の紹介、規模、始めた経緯の順です。
経験タイプごとに、埋もれやすいところが違う
どの経験を選んでも書けますが、型ごとに字数を持っていかれやすい場所があります。書き始める前に、右の列の問いに1行で答えてみてください。
| 経験タイプ | 埋もれやすいところ | 掘り起こす問い |
|---|---|---|
| アルバイト | 業務内容の説明で字数が終わる | シフトのなかで、指示されていないのに自分がやっていたことは何か |
| サークル | 主語が団体になり、自分の担当が消える | その決め方を提案したのは誰か。自分は何を言ったか |
| ゼミ・学業 | 研究テーマの紹介が長くなる | 対象や手法を途中で選び直した場面はどこか |
| 部活動 | 練習量と大会の結果だけになる | 練習の組み方や記録の取り方で、自分が変えたものはあるか |
| 長期インターン | 会社と事業の説明になる | 任された範囲のうち、自分から広げた部分はどこか |
アルバイトを選ぶ人は多いようです。同じ業種の経験が並ぶことも多いので、業務の紹介ではなく、決まった手順の外で自分が動いた場面を選んでください。接客の仕事でなくても書けます。品出し、仕込み、採点、データ入力のような裏方の作業でも、順番や道具を自分で組み替えた場面があれば、それが行動のブロックの中身になります。時給や勤務条件の話は、この欄では材料になりません。
深掘り質問への備えは、工夫と数字と学びの3点で見る
面接でガクチカを話すと、多くの場合そこから質問が続きます。原稿ができた段階で、次の3点に自分で答えてみてください。答えが出てこない行があれば、そこがまだ思い出せていない部分です。
| 見るところ | 想定される質問 | 答えられないときに足すもの |
|---|---|---|
| 工夫 | なぜその方法にしたのですか。ほかの案は検討しましたか | 採用しなかった案を1つ思い出し、選ばなかった理由を1行で添える |
| 数字 | それはどのくらいの規模ですか。前と後で何が違いますか | 人数、期間、回数、頻度のうち、自分が覚えている単位を1つ入れる |
| 学び | その経験は今の自分にどうつながっていますか | 経験の後に自分が始めたこと、またはやめたことを1つ挙げる |
面接で答えに詰まりやすいのは、次の書き方です。
- 団体の成果だけを書いたもの。「大会で優勝しました」の後に自分の担当を聞かれると、話す材料が残っていません
- 手順の説明で終わったもの。「マニュアルに沿って接客しました」からは、自分が判断した場面が読み取れません
- 学びが一般論のもの。「継続することの大切さを学びました」は、どの経験からも書けてしまいます
- 規模の数字だけが大きいもの。店舗全体や団体全体の数字に説明が寄ると、自分が関わった範囲を聞かれたときに答えが細くなります
実際より大きく書いた原稿は、提出の段階では通っても、細部を聞かれる面接で困ります。どこまで自分が関わったかという質問に対して、書いた内容と記憶がずれていると、そのずれは受け答えの側に出ます。数字を膨らませるより、規模の小さい話を細かく書くほうが、質問が重なっても答えが続きます。
書けるガクチカがないときは、時間の使い方から拾い直す
「力を入れたこと」という言葉に引っ張られると、大会や表彰のように区切りのある経験ばかりを探すことになります。実際に書けるのは、時間を使った先で自分が何かを変えた場面です。探す順序を、活動の名前ではなく時間から始めます。
- 直近1年のカレンダーや時間割を開き、週に3時間以上使っていたものを全部書き出す。就活で語れるかどうかで選ばない
- それぞれについて、その期間に面倒だった場面を1つ書く。うまくいかなかったこと、やり直したこと、人ともめたことのどれかで探す
- 面倒だった場面のそれぞれに、自分がどう対処したかを1行足す。何もしなかったものは空けたままにする
- 3行目を書けたものが残れば、それがガクチカの材料です。全部が空欄なら、期間を2年に広げるか、週2時間まで下げてもう一度並べる
アルバイトも部活動もしていない場合は、授業の課題、資格の勉強、家の用事、続けている趣味が同じ枠に入ります。1つしか残らなくても足ります。ガクチカの欄は、複数の経験を並べるより1つを深く書くほうが、面接での質問に答えやすくなります。書き出した項目が3つ以上残ったときは、上の3点(工夫と数字と学び)に答えやすいものを選んでください。
提出前の点検表
原稿ができたら、次の6つを当てていきます。1つ直してから次の行へ進むほうが、全体を書き替えずに済みます。
| 見るところ | 直し方 |
|---|---|
| 主語が「私たち」のまま続く段落がないか | その段落の動詞を1つずつ見て、自分がやったものだけを残す。団体でやったことは背景として1文にまとめる |
| 活動の紹介が、行動の記述より長くなっていないか | 団体の説明、規模、始めた経緯を先に削る。この欄で残るのは活動の中身よりも、そこでの動き方だと考えられる |
| 行動のブロックに、自分が選んだ場面が入っているか | 「頑張りました」「力を入れました」を、変えた、やめた、頼んだ、数えた、のような動詞に書き換える |
| 結果に、数えられるものが1つ入っているか | 売上や順位を出せない場合は、人数、回数、期間、頻度のどれかを使う。記録が残っていない数字は書かない |
| 学びの1文が、ほかの経験からも書ける内容になっていないか | その経験の後に自分が変えた行動を1つ挙げ、そこへ結びつける |
| 自己PRの欄と同じ文が出てきていないか | 同じ経験を使うのはかまわない。ガクチカでは過程、自己PRでは強みに絞り、2枚を並べて重なった文を書き換える |
はじめの2行は、ガクチカの欄に固有のものです。1行目で主語を自分に直すと活動の紹介も一緒に縮むので、この順で当てると2行目の手直しが軽く済みます。3行目から6行目は、下のチェックツールが見る観点(抽象的な自己PR、根拠の薄さ、使い回し感)と重なります。原稿をそのままツールに通しておくと、抽象語のまま残っている箇所があれば、そこが結果に出てきます。
生成AIに任せる範囲は、素材が集まった後で決まる
募集要項や提出フォームに生成AIの利用について書かれていれば、その条件が優先で、ここから先は記載が見当たらないときの話になります。
ガクチカが他の設問と違うのは、提出した原稿がそのまま面接の質問表として使われることが多い点です。全文をAIに書かせると、文章として通る原稿は手元に残りますが、一文ずつの裏付けが自分の記憶と結びついていません。読み上げるところまでは進んでも、1問掘り下げられた先で答えが続かなくなりやすいのはこのためです。なぜその方法にしたのか、ほかに何を試したのかという問いには、原稿に書かなかった細部が要ります。
AIに文章を整えさせたなら、提出する前に原稿と自分の記憶を突き合わせておきます。
- 原稿を句点で区切り、1文ずつに分ける
- それぞれの文について、いつ、どこで、誰が関わっていたかを声に出して言ってみる
- 言えなかった文に印を付ける。そこはAIが埋めた一般論なので、自分のメモにある言葉へ戻す
- 残った文の横に、その行動を選んだ理由を1行ずつ書き足す。この1行が、掘り下げられたときに話す材料になる
その日その場で自分が感じたことは、書き出しておかないと後から取り出せません。手が止まった瞬間、断られたときの相手の言い方、うまくいった後で気づいたこと。原稿を仕上げる前にこの種の断片を箇条書きにしておくと、質問が重なっても話す材料が残ります。
自己PRや志望動機の欄とは、どこで分けるか
同じ経験を、ガクチカと自己PRの両方に書いてもかまいません。分かれるのは切り取る部分です。ガクチカでは、うまく進まなかった時期から結果までを時間の順に書きます。自己PRでは、その流れのなかで繰り返し出てきた自分の動き方を1つ取り出して、名前を付けます。片方は時間の順、もう片方は特徴の説明になるので、2枚を並べて読んでも文が重なりません。自己PRの欄については自己PRの書き方と強み別の例文、志望動機の欄については就活の志望動機の書き方と業界系統別の例文にまとめています。ガクチカに長期インターンの経験を使う場合、参加後に送るお礼の文面はインターンのお礼メールのテンプレートにあります。
最後に、書き上げた原稿を見ながら自分に3つ質問してみてください。なぜその方法だったのか、ほかに何ができたか、その経験の前と後で自分の何が変わったか。口頭で答えられれば、面接で掘り下げられても話が続きます。答えに詰まった問いがあれば、そこを思い出してから原稿に1文足してください。