書き始める前に、手元へ2種類のメモを用意します。1つは応募先について調べたこと、もう1つは自分が時間を使ってきたことです。この2つがそろっていれば、あとはどれとどれを組み合わせるかを選ぶ作業になります。片方が空のまま書き始めると、言葉を足すほど抽象的になっていきます。
- 応募先について書くときは、事業、製品、顧客、仕事の進め方のうち、採用サイトや説明会で自分が確かめたものを先に置きます。理念や社風から入ると、同業他社にも当てはまる文になりやすいです
- 経験に選ぶのは、結果の大きさではなく、自分が判断した場面です。何に困り、何を試し、その後どうなったかの3つがそろうと、読み手はあなたの動き方を追えます
- 入社後にやりたいことは、募集職種の一覧を開いてから書きます。募集のない仕事を挙げると、応募先を調べる前に書いたように読まれることがあります
志望動機は4つのブロックでできている
エントリーシートの設問欄は1問あたり200〜400字ほどの指定が多く、志望動機、自己PR、ガクチカのように設問そのものが分かれています。志望動機の欄に入れるのは、次の4つです。設問1問だけでも、この4つがそろっていれば読み手は判断できます。
- 結論。志望する職種と、その会社を選んだ理由を1〜2文で言い切る(2割)
- 根拠となる経験。志望のきっかけになった出来事と、そのとき自分が動いたこと(3〜4割)
- その会社を選んだ理由。同業他社ではなくこの会社である点を、確かめられる事実で挙げる(2〜3割)
- 入社後にやりたいこと。職種と、最初に担当したい領域まで具体化する(2割)
300字の欄なら、結論に60字、経験に110字、会社を選んだ理由に80字、入社後に50字あたりが目安です。400字に増えた分は、2番目と3番目に回します。設問が複数に分かれている場合、経験の分量は志望動機の欄では抑えめにして、ガクチカの欄に厚く書くと、3問続けて読んだときの重複が減ります。書き上げたら字数を数えて、3番目が採用サイトの引き写しになっていないか、4番目が「貢献したい」だけで終わっていないかを見てください。
最初の1文で、何の志望動機かを分からせる
採用担当者は、1行目を読んだ時点で何の話が始まるかを予想しながら読み進めます。生い立ちや性格の説明から入ると職種にたどり着くまでに数行かかってしまうのは、そのためです。入り方は次の3つのどれかに寄せると、後で選ぶテンプレートとも合わせやすくなります。
- 職種から入る型:「私は貴社の{職種名}を志望します。{取り組みたいこと}に関わりたいからです。」職種の区分がはっきりしているメーカー、金融、商社と相性がよく、インターンの応募でも使えます
- 課題から入る型:「{使う人や顧客}が{具体的な困りごと}を抱えたままになっています。私はこれを{手段や領域}の側から減らす仕事に関わりたいと考え、貴社の{職種名}を志望します。」IT・ソフトウェアのように、解きたい課題のほうから職種が決まる領域に向きます
- 場面から入る型:「{時期}、{場面}で{自分がしたこと}を担当したとき、{そこで見えたこと}に行き当たりました。」公務員のように、地域や現場で自分が見たものが動機の出発点になっているときに使います
どの入り方を選んでも、2文目までには職種か仕事の内容へ着地させます。場面の説明が続くと、肝心の志望理由が後ろへ押し出されます。「私は幼い頃から」「貴社の理念に共感し」で始まる書き出しは、応募者が変わってもそのまま書けてしまう一文です。締めも同じで、「よろしくお願いいたします」で終えず、最後の1文は入社後にやりたいことに使います。
業界系統ごとに、集める材料が違う
書く前に集めておく材料は、業界系統によって変わります。下の表は、どこから材料を探すかを決めるための目安です。求める人物像を採用サイトで示している企業も多いので、表と食い違う場合はそちらを優先してください。
| 業界系統 | 材料を集める切り口 | 用意しておく材料 |
|---|---|---|
| メーカー | 製品や技術への関心の出どころ | 製品名、工程、展示会や工場見学で自分が見たもの |
| IT・ソフトウェア | 減らしたい手間と、その相手 | 使ってきたサービス、作ったもの、詰まった場面 |
| 金融 | 数字と決まりごとに向き合った経験 | 長く続けた取り組み、確認を重ねた場面 |
| 商社 | 立場の違う相手を動かした場面 | 交渉や調整をした場面と、そこで譲った条件 |
| 公務員 | 地域や制度で気になっている課題 | 自治体の計画や統計で見た数字、現場で見たこと |
業界を絞りきれていない段階でも、右の列の材料集めは先に進められます。材料が集まった業界から、志望動機を書ける状態になります。
インターンと本選考では、書く範囲が変わる
インターンの志望動機で中心になるのは、入社の意思よりも、参加して何を確かめたいかです。選考直結型のプログラムでは、募集ページの設問文に合わせてください。本選考では、入社後にどの職種で何をするかまで書きます。同じ文章を両方に使い回すと、インターンでは重く、本選考では薄くなりがちです。
| インターン | 本選考 | |
|---|---|---|
| 中心に置くもの | 参加して確かめたいこと | 入社後にやりたいこと |
| 経験の使い方 | 関心の裏づけとして短く置く | 志望の根拠として具体的に書く |
| 会社を選んだ理由 | プログラムの内容と結びつける | 事業と職種に結びつける |
| 読み手が決めること | 選考の場に来てもらうか | 一緒に働くか |
インターンで見聞きしたことは、本選考の志望動機でそのまま根拠に使えます。参加中に、誰のどの発言が自分の考えを変えたかをメモしておくと、後で書き直す時間が短くなります。参加後のお礼メールはインターンのお礼メールのテンプレートにまとめています。
志望動機が思いつかないときは、先に材料を集める
志望動機が出てこないとき、足りないのは文章ではなく材料です。次の順に手を動かすと、書ける会社と書けない会社が分かれます。
- 自分側の棚卸し。これまでに時間を使ったこと(アルバイト、部活、ゼミ、長期インターン、資格の勉強)を5つ書き出し、それぞれ続けられた理由とやめたくなった理由を1行ずつ書く
- 会社側の材料集め。採用サイトの事業紹介、社員インタビュー、ニュースリリースから、事実を3つ書き出す。数字、顧客、仕事の進め方のどれかが入っている事実を選ぶ
- 突き合わせ。1で書いた「続けられた理由」と、2で書いた事実を線でつなげるか試す。つながる組み合わせが1つあれば、それが志望動機の核になる
- つながらないときの扱い。その会社について調べた事実が足りないか、応募先として自分に合っていないかのどちらかです。合わないと分かったこと自体が、次に受ける会社を絞る材料になります
この手順は、志望動機が「ない」状態と、まだ書き出していないだけの状態を分けるためのものです。1で挙げた5つのうち、続けられた理由が同じものが2つ以上あれば、そこがあなたの動機のもとになります。
提出前に見る6つの点検項目
書き上げた原稿には、次の6つを上から順に当てていきます。気になった箇所を一度に直そうとすると全文を書き替えることになるので、1つ直してから次へ進むほうが早く終わります。
| 点検すること | 当てはまったときの直し方 |
|---|---|
| 同業他社の同じ設問に出しても、そのまま通る文が残っていないか | 置き換えると成り立たなくなる事実(製品名、担当する顧客、仕事の進め方、社員から聞いた話)を、会社を選んだ理由の段落に1つ入れる |
| 会社を選んだ理由が、採用サイトや説明会で確かめた事実に着地しているか | 理念や社風で終わっている文の直後に、自分が確かめた具体を1つ足す。どこで確かめたかも添えると、調べた範囲まで伝わる |
| 志望のきっかけが、時期と自分の行動まで書かれているか | 出来事を1つに選び、いつ、どこで、自分が何をしたかを補う。複数のきっかけを並べるほど、どれが動機なのか読み取れなくなる |
| 「主体性」「課題解決力」などの語のあとに、その場面が書かれているか | 語そのものを消し、自分が決めたことと、決めた後に何が変わったかに置き換える |
| 入社後の記述が、募集職種と対応しているか | 採用ページの職種一覧を開き、実在する職種名と、その職種が担当する範囲に書き直す |
| 設問間(志望動機、自己PR、ガクチカ)で、同じエピソードの同じ文を使い回していないか | 同じ経験を使ってよいので、志望動機では志望へのつながり、自己PRでは発揮した強み、ガクチカでは工夫の過程へ、切り取る面を変える |
上から4つは、下のチェックツールが見る観点(使い回し感、企業とのつながりの弱さ、根拠の薄さ、抽象的な自己PR)と対応しています。自分で読み返す前に一度貼り付けると、弱い箇所を先に絞れます。最初に手をつけるのは3つ目です。きっかけに時期と行動が入ると、それに合わせて会社を選んだ理由と自己PRも書き直すことになり、1つ目の使い回し感はその過程でほとんど収まります。下の2つは設問をまたぐ点検なので、志望動機、自己PR、ガクチカを並べてから見比べてください。
生成AIに下書きを書かせるときの線引き
志望動機をAIで作る方法は広く紹介されていますが、全文を書かせた原稿は、企業名を入れ替えても成り立つ文章になりやすく、上の点検表の1つ目に真っ先に当たります。生成できるのは、すでに世の中で語られている志望理由の平均像だからです。
任せやすいのは、集めたメモを並べ替える、書いた文章を読み返す観点を出す、長い段落から削る候補を挙げるといった前後の工程です。一方で、自分の経験と応募先を結びつける数文だけは、実際に調べて考えた本人にしか書けません。面接では、書いた内容について「なぜそう考えたのか」を自分の言葉で説明することが多いです。応募先が提出書類の作成について案内を出していることもあるので、書き始める前に募集要項や案内を確かめてください。
進学の志望理由書とは、読み手も軸も違う
同じ「志望」でも、大学や専門学校へ出す志望理由書は、読み手が入試の担当者に変わり、見られる軸も入社後の働き方ではなく入学後の学びに移ります。就活の志望動機をそのまま出しても、進学の書類にはなりません。進学の書類の書き方は志望理由書の書き方と学部系統別の例文にまとめています。
志望動機は、書き上げてからが本番です。1社目で4つのブロックを作っておくと、2社目からは3番目のブロックを応募先ごとに差し替える作業になります。差し替えたら、そのたびに上の6つの点検項目を通してください。