大学のレポートは、与えられた問いに対して、文献やデータを根拠に自分の主張を論じる文章です。思ったことを書く感想文とは違い、序論で問いを示し、本論で根拠を挙げて論じ、結論で問いに答える3部構成で書きます。
初めて2,000〜4,000字のレポートを課されると、何から書けばいいのか、どこまでが「自分の意見」でよいのかが分からないもの。この記事では、中央大学ライティング・ラボの「レポートの書き方資料」を主な拠り所に、課題文の読み方から提出前の確認までを、書く順番に沿って整理します。例文は、すべて「大学生のSNS利用と睡眠」という架空のレポートで統一しています。
この記事で分かること
- 大学レポートと感想文の違いは、主張に根拠と出典が付いているかどうか
- 課題文の「論じよ」「説明せよ」「考察せよ」「比較せよ」で、本論と結論に書く中身が変わる
- 序論・本論・結論の分量は1対8対1が目安で、2,000字なら序論と結論が約200字ずつになる
- 序論の書き出しは「問い」「背景」「定義」の3つの型から選び、「興味を持った」という動機から始めない
- 本論は1段落に1つの主張を置き、段落の最初の文で主張を言い切る
- 考察は根拠の意味と限界を述べる部分、結論は序論の問いに答える部分で、役割が違う
- 体裁は授業の指定が最優先で、指定がなければA4・余白25〜35mm・明朝体10.5ポイントが標準的な形
レポートと感想文の違い
レポートと感想文のいちばんの違いは、書いた内容を第三者が確かめられるかどうかです。感想文は自分がどう感じたかを書けば成り立ちますが、レポートは主張の一つひとつに根拠と出典が求められます。
| 観点 | 感想文・作文 | 大学レポート |
|---|---|---|
| 目的 | 感じたこと・考えたことを伝える | 問いに答え、主張を論証する |
| 出発点 | 体験や印象 | 課題として与えられた問い |
| 根拠 | なくても成り立つ | 文献・データ・資料が必要 |
| 出典 | 書かない | 本文中と末尾のリストで示す |
| 文体 | です・ます調が多い | だ・である調(常体)で統一 |
| 評価のされ方 | 共感できるか、表現が豊かか | 問いと答えが対応し、根拠で支えられているか |
感想文のクセが出やすいのが、中央大学の資料が「私語り」と呼ぶ書き方です。調べた経緯を語ったり、根拠のない推測で書いたりすると、読み手にとっては確かめようのない情報になります。
授業で先生の話を聞いて、SNSは若者の睡眠に悪いのではないかと思った。図書館で調べてみたら、やはりそうらしいことが分かった。
大学生のSNS利用と睡眠時間の関係については、[著者]([年])が[対象]を調べ、[結果]を報告している。
「授業で聞いて」「調べてみたら」という経緯を消し、何が分かっているのかを出典つきで書いています。経緯は書き手の努力の記録であって、読み手が判断に使える情報ではありません。
課題文の読み方:「論じよ」と「説明せよ」で書く中身が変わる
書き始める前に、課題文の最後の動詞を確かめてください。「論じよ」と「説明せよ」では、本論で何をすべきかも、結論で何を書くかも違ってきます。
| 課題文の動詞 | 求められていること | 本論の中心 | 結論に書くこと |
|---|---|---|---|
| 説明せよ・述べよ | 事柄を正確に整理して伝える | 定義・仕組み・経緯を文献で整理する | 要点のまとめ。自分の立場は控えめに |
| 論じよ | 問いに対して立場を取り、根拠で支える | 主張、根拠、予想される反論への応答 | 問いへの答え(どちらの立場か) |
| 考察せよ | 資料やデータから意味を読み取る | 資料の要約と、そこから言える解釈 | 読み取れたことと、まだ言えないこと |
| 比較せよ | 2つ以上の対象を同じ観点で並べる | 観点ごとの共通点と相違点 | 比較から分かったこと |
この対応は目安です。授業によっては「考察せよ」で立場まで求めることもあるので、シラバスや授業中の説明を優先してください。
課題を1つの問いに直す
「SNSと若者について論じなさい」のような広い課題は、そのままでは2,000字に収まりません。答えが1つに定まる問いの形に絞ってから書き始めます。
SNSと若者の関係について論じる。
大学生のSNS利用時間は、睡眠時間を短くしているのか。
対象(大学生)、要素(利用時間と睡眠時間)、問いの形(〜しているのか)がそろうと、集めるべき根拠と結論で答える内容が決まります。
書き始める前に確認する指定
課題文やシラバスには、内容とは別に形式の指定が書かれています。次の6点を先にメモしておくと、提出直前の手戻りが減ります。
- 字数(「2,000字程度」「2,000字以上」など、上限か下限か)
- 書式(用紙サイズ、1ページの字数と行数、フォント)
- 表紙の要否
- 参考文献の書き方の指定(SIST02、APAなど)
- 提出形式(Word、PDF、ファイル名のルール)
- 締切の日時と提出先(LMSか、紙か)
生成AIを使ってよいかも授業の指定が最優先で、文部科学省の周知文書も、可否は各大学が示すことが望ましいとしています。
大学レポートの構成:序論・本論・結論の役割と字数配分
大学レポートの構成は、序論・本論・結論の3部が基本です。中央大学の資料は、分量の目安を序論10%、本論80%、結論10%程度としています。
| 部分 | 見出しの例 | 役割 |
|---|---|---|
| 序論 | はじめに | 背景、問い、レポートの進め方を予告する |
| 本論 | 内容を示す見出し(2〜4つ) | 根拠を挙げて問いに答える議論を展開する |
| 結論 | おわりに | 本論を要約し、問いへの答えと残った課題を書く |
この比率を字数に当てはめると、配分の目安は次のようになります。数字は書き始めの設計図として使ってください。
| 部分 | 2,000字のレポート | 4,000字のレポート |
|---|---|---|
| 序論 | 約200字(1段落) | 約400字(1〜2段落) |
| 本論 | 約1,600字(論点2つ×約800字) | 約3,200字(論点3つ×約1,000字+考察) |
| 結論 | 約200字(1段落) | 約400字(1〜2段落) |
本論の論点の数は、字数から逆算すると決めやすくなります。2,000字で論点を4つ以上立てると、1つあたり400字を切り、根拠を示す前に段落が終わってしまいます。見出しは次のように立てると、論点の数と配分が一目で確認できます。
- はじめに
- [論点1:たとえば利用時間と睡眠時間の関係]
- [論点2:たとえば就寝前の利用と寝つきの関係]
- おわりに
- 参考文献
序論の書き方と書き出しの例
序論に書くのは、背景、問い、レポートの進め方の3つです。読み手は序論だけで「何について、何を根拠に、どんな順で論じるのか」を把握できる必要があります。
書き出しの1文目は、次の3つの型から選ぶと迷いません。
- 問いから入る型:「大学生のSNS利用は、睡眠時間を短くしているのだろうか。本レポートでは、[資料名]の調査結果を手がかりに、この問いを検討する。」
- 背景から入る型:「[調査名]([年])によると、就寝前にスマートフォンを使う大学生は[割合]にのぼる。こうした利用が睡眠にどう関わるのかを論じる。」
- 定義から入る型:「本レポートでいう『睡眠の質』とは、[出典]に従い、寝つくまでの時間と夜中に目が覚める回数で測るものを指す。」
問いが明確なテーマなら1、社会的な広がりを示したいなら2、言葉の意味が人によって揺れるテーマなら3が向いています。
序論の最後には、本論の順番を1文で予告します。「本レポートでは、まず〜を、次に〜を検討し、最後に〜を述べる。」の形にすると、読み手が全体の見通しを持てます。
避けたい書き出し
いちばん多いのは、テーマを選んだ動機から書き始める形です。立命館大学の山井敏章教授のレポート・論文の書き方も、問題意識は「たんに個人的な思い入れを述べるのでなく」、そのテーマを検討する意味に触れるよう求めています。
私はSNSと睡眠の関係に興味を持ったので、このテーマについて調べてみることにした。
大学生のSNS利用は、睡眠時間を短くしているのか。本レポートでは、[資料名]をもとにこの問いを検討する。
動機の文を問いの文に置き換えました。1文目で問いが出れば、読み手はその答えを探しながら本論を読める。
もう1つ避けたいのが、「最近、SNSの利用が問題になっている」のような出典のない一般論から入る形です。背景から入るなら、何がどの程度問題なのかを資料で示してください。
本論の段落の作り方:1段落に1つの主張
本論は、1つの段落に1つの主張を置き、その主張を段落の最初の文で言い切って書きます。中央大学の資料はこの最初の文を「中心文」と呼び、学術的な文章では中心文を段落の頭に置く形が最もよく使われるとしています。
段落の中身は、次の4つをこの順に並べると組み立てやすくなります。
| 順番 | 書くこと | 例(架空のレポート) |
|---|---|---|
| 1. 主張 | この段落で言いたいこと | 就寝前のSNS利用は、寝つきを悪くしている可能性がある。 |
| 2. 根拠 | 主張を支える文献・データ | [調査名]では、[条件]の学生は[結果]だった。 |
| 3. 出典 | 根拠の出どころ | ([著者],[年]) |
| 4. 解釈 | 根拠から主張がなぜ言えるか | この結果は、利用時間の長さより利用する時間帯が関わることを示している。 |
書き終えたら、各段落の最初の文だけを抜き出して上から読んでみてください。それだけでレポートの要旨として筋が通っていれば、段落の組み立ては成功しています。途中で話が飛ぶなら、その段落に主張が2つ混ざっているか、段落の順番が入れ替わっています。
根拠の集め方
根拠にする資料は、誰が書いたのかと、いつの情報かが分かるものを選びます。
| 探したいもの | 探す場所 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| テーマの基本を押さえる本 | 所属大学図書館の蔵書検索(OPAC) | 定義や経緯を説明する根拠 |
| 日本語の論文・本 | CiNii Research | 先行研究の主張を示す根拠 |
| 英語を含む学術論文 | Google Scholar | 研究結果を示す根拠 |
| 国や自治体の統計 | e-Stat、各省庁の白書 | 規模や推移を数字で示す根拠 |
Webのまとめ記事や百科事典サイトは、話の入り口には便利でも、そのまま根拠にはしません。記事が引いている元の調査や論文までたどり、そちらを出典にしてください。どうしてもWebページを出典にする場合の書き方は、ウェブサイトの参考文献の書き方にまとめています。
集めた論文のPDFや講義資料は、インキのAIアシスタントに読み込ませると要点を拾えます。どの資料のどこに何が書いてあるかを確かめながら、本論の段落の材料をそろえられます。
考察と結論の書き方:何が違うのか
考察は、本論で示した根拠が何を意味するかを解釈し、その解釈の限界を述べる部分です。結論は、序論で立てた問いに答え、残った課題を示す部分です。
| 考察 | 結論 | |
|---|---|---|
| 置く場所 | 本論の終わり、または各論点の後 | レポートの最後(おわりに) |
| 答える問い | この根拠から何が言えるか | 序論の問いへの答えは何か |
| 書くこと | 解釈、他の資料との比較、限界 | 本論の要約、問いへの答え、今後の課題 |
| 新しい根拠 | 出してよい | 出さない |
同じ架空のレポートで書き分けると、次のようになります。
考察の例:「2つの調査を並べると、睡眠時間との関係は、SNSの1日の利用時間よりも就寝前の利用のほうがはっきりしている。ただし、どちらも学生の自己申告にもとづくデータであり、利用時間の測り方には限界がある。」
結論の例:「本レポートでは、大学生のSNS利用が睡眠時間を短くしているのかを検討した。その結果、利用時間の長さよりも就寝前の利用が睡眠時間と関わっていることが示唆された。今後は、[残った課題]を確かめる必要がある。」
考察は「根拠のどこまでが言えて、どこからが言えないか」で終わり、結論は「問いへの答え」で終わっています。結論で初めて出てくる資料や主張があれば、それは本論か考察に移してください。
避けたい結論
今回のレポートを通して、SNSと睡眠について深く考えることができ、とても勉強になった。
本レポートでは、[問い]を検討し、[答え]と結論づけた。ただし、[検討できなかった点]は今後の課題である。
「勉強になった」は書き手の感想で、序論の問いに答えていません。問い、答え、残った課題の3つを書けば、結論として成り立ちます。立命館大学の山井教授も、「おわりに」には問題に対する結論に加えて、扱いきれなかった「残された課題」を書くよう勧めています。
体裁:表紙・文字数・Wordの設定
体裁は、授業の指定が最優先です。指定がないときは、大学のライティング支援の資料が示す標準に合わせておけば、形式で減点されにくくなります。
表紙に書くこと
表紙には、次の項目を書きます。中央大学の資料では、タイトルを12〜14ポイントにする例が示されています。
- 授業名(曜日・時限を添えると親切)と担当教員名
- レポートのタイトル(課題名とは別に、内容を表す題を付ける)
- 学部・学科、学籍番号、氏名
- 提出日
表紙が不要な授業では、1ページ目の上部に同じ情報をまとめて書き、すぐ本文に入ります。
文字数の数え方
指定字数に表紙や参考文献リストを含めるかは、授業によって違うので、要項に書かれていなければ教員に確認します。「2,000字以上」のような下限の指定なら、本文だけで字数を満たしておけば、含む場合も含まない場合も足りなくなりません。「2,000字以内」のような上限の指定で参考文献まで数えるなら、本文と参考文献を合わせて上限に収めます。
Wordで字数を見るなら、「校閲」タブの「文字カウント」。表示される「文字数(スペースを含めない)」を基準にします。「2,000字程度」の「程度」がどこまで許されるかは教員によるので、指定の字数に近づけ、上下どちらにずれてよいか分からなければ確認してください。
Wordの設定
指定がないときの設定の目安と、Wordでの操作は次のとおりです。
| 項目 | 指定がないときの目安 | Wordでの操作 |
|---|---|---|
| 用紙 | A4縦 | 「レイアウト」→「サイズ」 |
| 余白 | 上下左右25〜35mm(Wordの「標準」相当) | 「レイアウト」→「余白」 |
| 本文のフォント | 明朝体、10.5ポイント | 「ホーム」→フォント欄 |
| 見出し | 本文より大きく(11〜12ポイント) | 「ホーム」→スタイル |
| 1ページの字数・行数 | 指定があれば合わせる(例:40字×30行) | 「レイアウト」→「ページ設定」→「文字数と行数」 |
| ページ番号 | ページ下部に入れる | 「挿入」→「ページ番号」 |
| 段落の書き出し | 全角1字下げ | 段落の先頭で全角スペースを入れる |
余白・フォント・見出しの目安は、中央大学の資料のレイアウト例にもとづいています。
文体・引用・参考文献
文体は「だ・である」の常体でそろえます。「です・ます」が混ざったときの直し方は、常体と敬体の違いと使い分けが参考になるはずです。
他人の文章や考えを使った箇所には本文中に出典を示し、末尾の参考文献リストと1対1で対応させる。これが引用と参考文献の基本形です。かぎかっこでの直接引用と要約しての間接引用の違いは引用の書き方、本・論文・Webページごとのリストの書き方は参考文献の書き方で詳しく扱っています。
インキでは、本文の引用したい位置にDOIやURL、手入力で出典を付けておくと、Word(.docx)で書き出すときに参考文献リストが自動で付きます。資料を読み込んで要点を拾い、出典を付けながら書き、Wordで出すまでを1画面で進められます。無料で書き始める
提出前チェックリスト
書き終えたら、提出ボタンを押す前に次の項目を上から確認してください。
- 序論の問いと、結論の答えが対応しているか
- 課題文の動詞(論じよ・説明せよなど)に合った中身になっているか
- 各段落の最初の文を抜き出すと、要旨として筋が通るか
- すべての主張に、根拠と出典が付いているか
- 本文中の出典と、参考文献リストの項目が1対1で対応しているか
- 「〜と思った」「勉強になった」など感想文の表現が残っていないか
- 文末が「だ・である」でそろっているか
- 字数の指定を満たしているか(下限の指定なら本文だけで、上限の指定なら数える要素をすべて合わせて上限内に)
- 用紙・余白・フォント・ページ番号が指定どおりか
- 表紙(または1ページ目上部)に授業名・学籍番号・氏名・提出日があるか
- ファイル形式とファイル名が提出ルールどおりか
全部を一度に直そうとせず、問いと答えの対応、根拠と出典、形式の順に見ていくと、時間が限られていても重要なものから片づきます。
最初の1本は、この記事の見出しの順に、課題文の確認から進めてみてください。学生向けの使い方は学生・研究者向けのページでも紹介しています。